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ボクセルアートの歴史 — 医療 CT から Comanche、Minecraft、MagicaVoxel まで
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ボクセルアートの歴史 — 医療 CT から Comanche、Minecraft、MagicaVoxel まで

「ボクセル (voxel)」という言葉は、いまでこそ MinecraftCrossy Road のような立方体ゲームのアートスタイルとして知られていますが、もともとは 1970-80 年代の医療用 CT スキャンで生まれた専門用語でした。3D 空間の最小単位を表すこの概念が、約 40 年かけてゲーム業界・NFT メタバース・個人クリエイターのアートツールにまで広がっていく歴史を、一次ソースで辿ります。

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voxel = volume + element の語源

「voxel」は volume(体積)と element(要素)の合成語で、2D の最小単位「pixel」(picture + element)の 3D 版として作られました。語源は 1970 年代後半に医療画像処理分野で広まったとされ、現在広く参照される定義は Foley, van Dam ら『Computer Graphics: Principles and Practice』(1990) に登場します(Wikipedia 出典に同書記載あり)。

初期の用途はCT (Computed Tomography) スキャンMRI (Magnetic Resonance Imaging) の 3D データ表現です。CT は X 線で人体の断層画像を撮り、複数の断層を積み重ねると 3D の格子データになります。この格子の 1 マスを voxel と呼びました。1 voxel が CT 値(組織の X 線吸収率)を 1 つ持つ、というシンプルなデータ構造です。

つまり voxel の起源は「3D 空間に均等な格子を切り、各マスに値を持たせる」という単純なアイデアでした。後にゲームでアートスタイルになるとは想像されていなかった、純粋な工学概念です。

1992: Comanche と「Voxel Space」エンジン

ボクセルがゲームに登場した最初期の有名作品が、1992 年に NovaLogic がリリースした『Comanche: Maximum Overkill』です。攻撃ヘリのフライトシム(米陸軍 RAH-66 コマンチを題材)で、当時のポリゴンベース 3D が苦手としていた有機的な地形表現を、独自の「Voxel Space」エンジンで実現しました。

このエンジンは NovaLogic 副社長兼開発者 カイル・フリーマン (Kyle Freeman) が発明したもので、1996 年に米国特許化されています。技術的にはピュアな 3D ボクセルレンダリングではなく、「高さマップ+カラーマップ+レイキャスト」を組み合わせた 2.5D 手法です(厳密にはハイブリッド)。フリーマンはこのアイデアを医療用 CT/MRI のボリュームレンダリング技術から発想したと公言しており、医療画像とゲームグラフィックスを結ぶ最初の橋となりました。

『Comanche』は 66 MHz の 386/486 PC でも実用速度で動作し、それまでのフライトシムでは表現不可能だった峡谷・なだらかな丘・湖面を描き出してプレイヤーを驚かせました。NovaLogic はこのエンジンを発展させて Armored Fist(戦車)、Delta Force(FPS)など多数の作品を生み出し、1990 年代後半のリアル系ミリタリーゲームを支えました。

1999: Outcast — ボクセルとポリゴンの過渡期

ベルギーのスタジオ Appeal が 1999 年にリリースした Outcast は、Comanche 系のハイトマップ+ボクセル手法をさらに進化させたオープンワールド SF アクションです。地形はボクセルベース、キャラクターはポリゴン、というハイブリッド構造で、当時としては圧倒的にスケールの大きな異星世界を描きました。

しかし、ちょうどこの時期に 3dfx Voodoo シリーズや NVIDIA RIVA TNT などの GPU が一般化し、ハードウェアアクセラレーションされたポリゴン描画が急速に主流になっていきます。CPU で計算する Voxel Space 系エンジンは、リアルタイム性能で GPU ポリゴンに敵わなくなり、ゲーム業界からは一時期姿を消しました。

ボクセルが再びゲームの主役になるには、約 10 年を待つことになります。

2009: Minecraft — Notch のキューブ世界

2009 年 5 月 17 日。スウェーデンのプログラマー マルクス・ペルソン (Markus Persson, ハンドル名 Notch) が、独立系ゲーム開発フォーラム TIGSource に小さなゲームを投稿しました。Minecraft(当初は Cave Game という名前で公開、後に改名)です。

Minecraft の革新は、「ボクセルを 1 メートル四方のブロックとして扱い、プレイヤーが自由に置いて壊せる」という直接操作の思想にありました。Comanche 系のように地形を見せるためのボクセルではなく、プレイヤーが世界を構築する素材としてのボクセルです。技術的には、無限に広がる地形を約 16×16 ブロックの「チャンク」に分割し、必要に応じて手続き的生成と読み書きを行います。

初期版は Java で書かれた個人開発ゲームでしたが、Notch がフィードバックを受けながら高頻度でアップデートを続け、2010 年には会社 Mojang Specifications(後に Mojang Studios)を設立。2011 年 11 月 18 日に正式版 1.0 をリリース、その時点ですでに 400 万本以上が販売されていました。2014 年に Microsoft が 25 億ドルで Mojang を買収。Notch の純資産は約 15 億ドルに到達しました。

Minecraft は単なるゲームを超え、「ボクセル=立方体ブロックを置いて世界を作る」というビジュアル文法を世界中の子供と大人に普及させました。これ以降のボクセルアートは、Comanche 系の「地形レンダリング技法」から、「キューブを並べる表現様式」へと意味が変わっていきます。

2009-2015: モダン・キューブの時代

Minecraft の成功は、ボクセル風の表現を採用するインディーゲームの大波を引き起こしました。代表例:

  • 3D Dot Game Heroes (Silicon Studio / 2009) — PS3 向けのアクション RPG。ファミコン時代の 2D ピクセルキャラを 3D ボクセルで再現する独自のビジュアルが話題に
  • Cube World (Picroma / 2013-2019) — Notch にインスパイアされた RPG。長期間アルファ版で開発が続いた
  • Crossy Road (Hipster Whale / 2014) — モバイル向けのカジュアルゲーム。立方体動物が道を渡る簡潔さがヒット
  • Trove (Trion Worlds / 2015) — ボクセル MMO。プレイヤーが手作りボクセルアセットを世界に投稿可能

共通するのは「ローポリ・ハイコンセプト」の美学です。リアル系 3D が高精細化で開発コストが膨大化するなか、ボクセル表現は少ない計算資源で個性的なビジュアルを作れる強みで、インディーゲームのトレンドを牽引しました。

2015: MagicaVoxel — ボクセル制作のデファクトスタンダード

2015 年、「ephtracy」と名乗る匿名の個人開発者MagicaVoxel を無料公開しました。これがボクセル制作ツール業界を一変させました。

MagicaVoxel の特徴:

  • 無料・軽量: 100 MB 未満で動作。Windows/macOS 対応
  • 直感的なエディタ: ペン・消しゴム・選択範囲・コピー&ペーストといった 2D ピクセルアート風の操作
  • GPU パストレーシング・レンダラ内蔵: 制作したモデルを写実的なライティングで即時プレビュー
  • 独自のシンプルなファイル形式 .vox: 後述

2015 年の初公開以来、世界中の数十万のクリエイターに使われ、Twitter / Pixiv / ArtStation で #voxelart ハッシュタグが日常的に投稿される文化を生み出しました。MagicaVoxel の .vox 形式はゲームエンジン (Unity / Unreal) のインポーター、Web ベースのビューワー、3D プリント前処理ソフトなど多くのツールでサポートされ、事実上のデファクトスタンダードとなっています。

興味深いのは、ephtracy が本名や顔を公開せず、無料配布を続けていること。リポジトリは GitHub Pages の ephtracy.github.io で運用されており、コミュニティから多くの支援を受けながら個人開発を継続しています。

技術: .vox フォーマットの構造

MagicaVoxel の .vox 形式は、シンプルかつ拡張性のあるバイナリチャンク構造です。公式仕様 (ephtracy/voxel-model) によると基本構造は:

┌─────────────────────────┐
│ Header: "VOX " + version │ (8 bytes)
├─────────────────────────┤
│ MAIN chunk              │
│ ├─ SIZE  (X, Y, Z 寸法) │ (各 int32)
│ ├─ XYZI  (ボクセル配列) │ (各 voxel = x,y,z,色 index, 4 bytes)
│ └─ RGBA  (256 色パレット)│ (各 4 bytes)
└─────────────────────────┘

各ボクセルはわずか 4 バイトで表現されます: X 座標 (1 byte) + Y (1) + Z (1) + パレットインデックス (1)。 256 色パレットは別チャンクに 1024 バイトで格納されるので、 100 万ボクセルでも約 4 MB に収まります。比較として、ポリゴンメッシュ(OBJ や FBX)では同等の情報を表現するのに何十倍ものサイズが必要です。

軸の取り方は 「Z-up(Z 軸が上向き)」で、これは Blender や 3D プリント業界の慣例と一致しています。Three.js などの Web 3D ライブラリ(Y-up)に持ち込むときは、Y と Z を入れ替える軸変換が必要です。

技術: Greedy Meshing — ボクセルをポリゴンに変換するアルゴリズム

ボクセルデータをそのまま GPU に渡すと、 100 万個の立方体 = 600 万枚の面を描画することになります。そのままでは性能が出ません。そこで使われるのが 「グリーディ・メッシング (Greedy Meshing)」と呼ばれる最適化です。

2012 年、開発者 Mikola Lysenko がブログ "0fps.net" で発表したアルゴリズムが現代の標準になっています。基本アイデア:

  1. 各軸方向にスライス(平面)に切る
  2. 同じ色の隣接ボクセル面を、可能な限り大きな矩形に統合する
  3. 1 つの矩形 = 2 三角形(4 頂点)として出力

Minecraft の地下大空間や、表面が真っ平らな建造物では、これにより面数が 90 % 以上削減されます。Minecraft の Java 版もこの考え方を採用しており、内部メッシュビルダーは隣接同色ブロックをまとめてレンダリングします。MagicaVoxel が GLB / OBJ にエクスポートする際も同様の最適化が走ります。

2018-: NFT メタバースとボクセル

2018 年以降、ブロックチェーン技術と組み合わさることでボクセルアートは新しい価値を獲得しました。代表的なプロジェクト:

  • The Sandbox (2018 〜) — Ethereum ベースのボクセルメタバース。プレイヤーが「LAND」と呼ばれる 96×96×96 ボクセル区画を NFT として所有し、その上に独自のゲームを公開できる。
  • Cryptovoxels (2018 〜、現 Voxels) — Web ブラウザでアクセスできる仮想都市。土地が NFT
  • Worldwide Webb (2021 〜) — レトロ風ピクセル+ボクセル ハイブリッドのメタバース

これらのプラットフォームでは、MagicaVoxel で作成したボクセルアートをそのままアバター・建造物・アイテムとして持ち込むことができます。「個人クリエイターが作った 3D 作品が、明示的な所有権付きでデジタル経済の中で取引される」という構図は、ボクセルアートの新しい受容の形となりました。

ただし NFT ブームは 2022-2023 年に大幅に冷え込み、現在は「投機の道具」から「クリエイター経済の地味なインフラ」へと再評価が進んでいます。技術としてのボクセルは投機サイクルに依存せず、独自の表現様式として定着しています。

Web で動くボクセル — glTF と Three.js

2020 年代のボクセル制作・閲覧は、もはや専用アプリの中に閉じていません。glTF 2.0(Khronos Group が標準化、「3D の JPEG」と呼ばれる Web ネイティブな 3D フォーマット)に書き出すことで、ブラウザ・モバイルアプリ・VR ヘッドセットなど多様な環境で同じファイルが表示できます。

典型的なワークフロー:

  1. MagicaVoxel または Web ベースのエディタでボクセルアートを作成
  2. .vox / GLB / OBJ など複数形式でエクスポート
  3. Unity / Unreal Engine / Blender / Web (Three.js) など好きな環境にインポート
  4. SNS シェア用に回転アニメ GIF や MP4 を生成

Three.js などの WebGL ライブラリは InstancedMesh という機能を持ち、同じ形状(立方体)を 1 回のドローコールで数十万個描画できます。ボクセルアートは「同じ形のキューブを大量に並べる」という性質上、InstancedMesh と計算機的に非常に相性が良いのです。

まとめ — ボクセルが持つ表現の強み

  • 1970-80年代: 医療 CT/MRI で voxel (= volume + element) という用語が確立
  • 1992: NovaLogic Comanche の Voxel Space エンジンがゲームでの初本格採用
  • 1999: Outcast がボクセル+ポリゴンのハイブリッドで完成形を見せる。だが GPU 普及でポリゴンへ流れる
  • 2009.5.17: マルクス・ペルソンが Minecraft を公開。ボクセル=立方体ブロックの表現様式が世界に普及
  • 2010: Mojang 設立。2014: Microsoft が 25 億ドルで買収
  • 2015: ephtracy の MagicaVoxel がデファクト制作ツールに
  • 2012: Mikola Lysenko の Greedy Meshing がレンダリング最適化の標準に
  • 2018-: The Sandbox など NFT メタバースがボクセルを取り入れる
  • 現代: glTF + Three.js で Web ブラウザでもネイティブに表示・編集可能

ボクセルアートの本質的な魅力は、「制約から生まれる個性」です。立方体グリッドという厳しい制限が、かえって作者のセンスを際立たせ、見る側にも「これは作品だ」と認識させやすくなります。ファミコン時代のピクセルアートが今でも愛されているのと同じ理由で、ボクセルアートはこれからも一定の表現様式として残り続けるでしょう。自分で作って試したい方は、姉妹ページの ボクセルメーカーボクセルビューワー をご利用ください。

参考文献・ソース

記事作成に関する注記

本記事は AI(大規模言語モデル)を編集補助として活用して作成しています。 公開前に編集者が内容を確認していますが、事実誤認・仕様の解釈ミス・最新情報との齟齬が含まれる可能性があります。 重要な判断を行う際は、本文中の一次ソースや公式ドキュメントを必ずご自身でご確認ください。 誤りにお気づきの場合は、お問い合わせフォームよりご連絡いただけると助かります。

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